『博士号のとり方』をよんで(みたら結果的に本の内容はほぼ使わなかった)

はかせこうきかてい にねんせい ようしつ じょうほう

 

はじめに

にねんせいなので読書感想文を書く. 

本郷の書籍部に行ったら『博士号のとり方』という本が売っていた(2018年10月17日発売). オタクなので吸い寄せられて購入した.ちなみに,kindle版は存在しない(2018年12月2日現在)ので,読むならばみんなでシェアして読んで欲しい.僕は自分の身の回りの建物の重量をいたずらに増加させる書籍がとても嫌いである.

博士号のとり方[第6版]―学生と指導教員のための実践ハンドブック―

博士号のとり方[第6版]―学生と指導教員のための実践ハンドブック―

 

対象読者

これは2018年のeeic Advent Calendarの記事なので,博士後期課程に在籍する人だけではなく,例えば学部や修士の人や,すでに博士号を持っている教員の方々などにも有益になるようにする.また,東京大学電気系(つまりeeic)の学生を主な対象読者とはするが,一般論として日本の大学生なら読めるようにしたいとは思っている.

 

宣言

好き勝手に書いていたら,結果的に主な対象読者はB3とB4になってしまった.内容も説教パンチになってしまった.そして文章が無限の長さになりそうだったから,肝心の本の内容の1%も反映できていない感じになった.だからまあ結局この本の内容を知りたいのであれば本を読むべきだと思う(それはそう(タイトル詐欺)).

 

 

博士課程に行くべき人材

本書の序盤では,どういう人が博士課程に行くべきかを書いている.例えば,以下のようなことが書いてある:

「これから先、何がしたいのかが分からないので大学に残ろう」と考えているのなら、あなたはその解決としては、とてつもなく困難な選択をしてしまったといわざるを得ない。

この文章によれば,何がしたいのかが分からずに博士後期課程に来た僕はとてつもなく困難な選択をしてしまったということになる.僕は自分が楽しいことか,社会で大いに役立つことか,もしくはその両方ができるといいなあとは思っているけど,具体的に「何がしたいのか」はやってみないとわからない.が,実際には僕は特に困難を感じていない(感じたほうがいいのかも知れない).

僕なりにこの文章を(よりまともに)解釈するならば,

※これは引用ではなく僕なりの解釈です

研究ってどういう活動なのかよく分からないけど、これから先、何がしたいのか分からないので大学に残ろう」と考えているのなら、あなたはその解決としては、とてつもなく困難な選択をしてしまったといわざるを得ない。

となると思う.つまり,(学会発表であれジャーナル執筆であれ製品化であれメディアアートの製作であれ)「研究をする」という行為が概ねどういう感じで・どの程度辛くて・どの程度楽しいのかを自分なりに分かっていない人が,いきなり研究の大海原にダイブするのはやばいよ,ということだと思っている.そして,日本では修士課程から(本格的な)研究活動が始まる.

日本のシステムの場合,結局のところ,修士課程に応募する(B4の夏ごろ)までに(or 遅くとも修士課程に入るまでに)研究活動というものを理解できていた方が,無知である場合に比べてかなり幸福な選択ができる可能性が高いと思われる.

 

そのためにも,大学教員やラボの上級生のみなさんは,新しくラボに入ってきた人々(eeicの場合はB4)になるべく早く研究活動をさせたほうがいいと思う.具体的には,めちゃくちゃしょぼくてもいいから,夏までに実験から論文執筆まで体験させるべきだと思う(ここでは,「生物学では論文を書くのにn年かかるよ」などといった分野毎の研究スパンの違いに関しては無視する).そうしないと,研究機関であるところの大学院に,何をするのかが分からない人材が入ってきて「困難な選択」をしてしまうからである.逆に,これから研究室に入るみなさんがどのような情報を集めるべきかについては,次の章で書く.

知らない研究室を知る

研究内容を知る

海外の大学では,学部卒業(B4)の時にいきなりPh.D. courseに応募することも多いため,お互いを全く知らない先生のところに応募することは割とよくあるっぽい.そのようにして知らない研究室に応募する際,この本によれば以下のことに気をつければ良いそうである:

評価が確立されているか、博士課程学生の教育に真剣に取り組んでいるかを確かめる必要がある。まずはウェブサイトを確認すること。そして、それらの取り組み具合にはあなたの成功がかかっているため、その学科に面接をしに行った際に躊躇せずそれについて尋ねるべきだ。

ほとんどの研究分野の有用な情報は、グーグルスカラーなどの検索エンジンで学術論文を見つけることで得られる。

わかる.

でもこれ,eeicについて言えば,(前章でも書いたけど)むしろ学部と修士で研究室を決める時にこそ大事なことかもしれない.B3やB4がよく知りもしない(というか,知ろうとしても原理上よく知ることができない)ラボに応募して,その結果として学生と研究室の相性が悪かった,となってしまう事象は毎年発生している.

 

一応,eeic全体としてもっとマッチングをはかろうよ,という努力はしている.どのくらいの人がこれを知っているかは定かではないが,去年から,EEIC*findという「eeicに所属する教員がYouTubeで自分のテーマを分かりやすく短く話す」試みを始めている.まだ盛り込まれている先生方は全員ではないけど,チャンネル登録とかをして動画を伸ばしてくれれば,多分他の先生の動画も増えると思う(適当).B3の人にとっては,「普段授業で分かったり分からなかったりすることを言う先生」みたいな人々が,本当は何をしているのか知る機会になると思う.そして肝心の僕が所属するラボの動画は(運営する側だったから)まだない.

※この埋め込み動画は再生リストになっているので,左上のアイコンを押すか,YouTubeのサイトに飛ぶかして,好きな動画をじっくり見るといいのかもしれない.

研究環境を知る

研究内容については上記の動画やウェブサイトから情報を得るのがいいと思うが,実はそれよりも,研究環境の方が(精神衛生上)はるかに大事だと思う.具体的には,以下のようなことが大事だと思っている

  • 小部屋(や自分の机)があるか?共用の大部屋か?パーティションはあるか?
  • 指導教員の部屋は学生の部屋から近いか?(= 気軽に質問できるか?)
  • 実験する部屋は学生の部屋から近いか?(= 気軽に実験できるか?)
  • 机や椅子の質はどうか?(= ラボに長居したいと思えるか?)
  • 金はあるか?(= やりたいことを気軽に試せるか?)
  • どのくらい開放的か,どのくらい閉鎖的か?
  • どのくらいの距離感を求める教員か?酒を飲みたいのか?
  • ミーティングは集団でやるのか?個人でやるのか?
  • 朝早く,夜遅くラボインする必要はあるのか?(コアタイムが存在する場合,それは自分の生活と合っているか?)
  • ラボに友達は入りそうか

これらの確認に際しては,自分で見に行くのと,その研究室の学生に聞くのと,直接先生に聞くのと,全てやったほうが良い.特に先生に会うのは大事だと思う.こういうことを直接先生に聞くのはためらわれがちかもしれないけど,むしろ先生だってそれを聞いてほしいと思っているはずである.なぜなら,日本の大学の場合,学生と教員のマッチングが取れていなかったとしても,システム上,先生の側から学生をクビにすることはできないからである.この理由から,学生だけではなく,先生も自分とマッチした人間と一緒に仕事をしたいと思っている.そもそも,真面目に率直な質問をして怒るような教員がいたとしたら,そのラボには行くべきではない. 

ちなみに,アメリカの大学の場合,(a) 大学院の学生は指導教員を途中で変更することができるし,(b) 指導教員は学生の生活費を切ることができる.だから,マッチングに失敗したとしても,学生・指導教員の両側からその修正をすることができる.しかし日本の大学の場合,(a') 大学院の学生は指導教員を途中で変更することはできないし,(b') 指導教員も学生をクビにする方法がない.だから,B3やB4の皆さんには,ぜひともすごく真剣にラボを選んで欲しい. 

最後に

実はこの5倍くらい書くつもりで書いてたんだけど,なんかまとまりが悪くなったのでだいたい削除した.やっぱりキレないで文章を書くとキレない感じになる.でもせっかくeeicの縦断忘年会の1日前の記事なんだから,これを読んだ若者がおじさんたちに話しかけるきっかけになったらいいかな,とも思っている.とりあえずここで終わるけど,多分ちょっとは書き直すと思う.ちなみに僕は縦断忘年会には行かない.スマブラもできない.

 

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刃牙道』 9巻78話より